手のひらの話

物語のような、呟きのような…

物書きになりたかった

50代になって思うのは、結局私がやりたかった仕事は何らかの形で文章を書く事だった。

なんとかライターとかジャーナリスト、何々作家などと言った仕事だ。目指した事もあったが中途でやめた。

いずれにせよ物書きは簡単に就ける職業ではないと思う。20代、当時の言葉でプー太郎、今で言うフリーター、略してプー生活を送っていた。今も大して変わらないのだが…。面接を受けた会社に何とか産業新聞というのがあった。

雑居ビルの小さな事務所だった。簡単な筆記試験があり、社員全員からの面接だった。東京の本社の決定が必要なので連絡は後日となった。

その日の午後、別の会社の面接を受けた。こちらは即決だった。先の会社に断りの電話を入れた。

「君なら間違いなく採用だったのだが」

物書きの仕事に最も近づき逃した瞬間だった。

その後も新人賞に応募したり、文章を投稿したりしたが職業としての物書きの入口には立てなかった。

今の私の年齢で新人賞を取り、作家となった方も多い。しかし自身にそのような文章が書けるとは思えない。文章は書き続けなければならないのだ。私にはその修行が足りない。